初夜権

ずいぶん前に、テレビで公開されたメル・ギブソン主演・監督「ブレイブハート」という映画で、知っておられる方も多いと思う(あるいは「フィガロの結婚」とか)。
有名な映画なので説明するまでもないとは思うが、物語は、西暦1200年代頃の中世の英国での出来事。当時イギリスの植民地だったスコットランドの平民ウィリアム・ウォレスがイギリスの植民地支配に反旗を翻し、英雄的な活躍をする…が…しかし、最後には友の罠に落ちて、処刑(八つ裂きに)されるまでを描いた歴史スペクタクル映画。
この映画の、ことの発端が「初夜権」であった。

ドラマはメル・ギブソン扮するウォレスが愛する女性と「領主の初夜権を忌避するために密やかに結婚した」ことからはじまる。
不幸なことに、それが領主の知るところとなり、ウォレスの最愛の妻は領主に浚われ惨殺されてしまう。ウォレスの抵抗(反抗)(「ブレイブハート」)はここからはじまる。

初夜権?
この言葉、有名とはいえ、はっきり意味を知っているひとは少ないかもしれない……
ちなみに広辞苑を引っ張ってみると

「初夜権 jus prime noctice(羅) :庶民・領民の結婚に際し、酋長・領主・祭司・僧侶などが花婿に先だって花嫁と同衾する権利」

などと記されている。「同衾(ドウキン)」とは、むずかしい言葉だが、要するに時(あるいは土地)の権力者が花婿に先だって花嫁と性交「セックス」する権利なのだ。早い話、処女権といっても良いかもしれない。
ところで、さっきの広辞苑の解説では、なんだか(意図的かどうかは知らないが)西洋だけで行われた風習のように感じるけれど。
じつはこの初夜権、驚くことに、かなり古今東西、普遍的に、だいたいどこにでもあったようなのだ。
もちろん、日本にも古くからある。
決して外国だけのことではない。
御大井上ひさし先生の「巷談辞典」(文藝春秋)には、

「羽前国(山形県)の米沢市には、婚礼の三日前に仲人が新婦をわが家に泊め、三夜共寝して、式の当日、なぜだか知らぬが餅を百八個添えてその新婦を新郎の家へ届けるというならわしがあった」

と記されている。同書には、この他にも、和歌山県の勝浦港、石川県、大分県日田夜明村「ボンボボ」などをあげている(ちなみに拙者、そこへは行ったことがある。また、拙者の田舎(福岡県山門郡)では性交のことを「ボボ」もしくは「ボウボ」と言ったが、なんか関わりがあるのかもしれない)。ボクも調べてみたが、これが結構至るところにあるのだ。

洋の東西を問わず、時の権力者というのは、ごうつくばりばかり~(笑)
この「初夜権(=処女権)」を持つことが、時の権力者のステータスを意味していた時代があったのだ。
現代では表面的には、だいぶ処女信仰というのは消えたが、それでも、ある種そういう言い方が残っているのは、こういったことが影響しているのかも……

ウォレスは、それが我慢ならなかった。
愛する女性のために、ウォレスは「自由」を求めたのだ。
しかし、支配者が決めた法(先にあったもの)を冒すのは、つねにルサンチマン(逆恨み)である。
ボクたちの言い方をするなら、
ウォレスは、ルサンチマン(野蛮と怨恨)に満ちていた。
画面に映し出される目を覆うほどの唯物的で残酷な暴力……
しかし、時代を変えるのは、つねに暗く野蛮な怨恨(ルサンチマン)でしかない。

「乱暴さは人間の反抗の形式であり
 ~中略~
 不穏当な行動をするのはひとつの幸福でさえある。もし地上へやってくる神があるとすれば、その神は、不穏当なこと以外はなにもしないのではあるまいか」(ニーチェ「この人を見よ」岩波文庫pp.30)

さぁ初夜権を奪い返せ!
そんな末人たちの歯ぎしりが聞こえるよ
この世の諸々のロケット花火的愁波(シンパ)に送られつつ、
気がつけば、人びとの頭上にたれ込めたどす黒い雲……
黒天に轟音とともに稲光が走り……
この世はしずしずと自壊する……
「無力の憎悪」だった「闇」の相転移がはじまる……。
やがて「闇」は人の頭をかち割り………返り血を浴びつつ………リセットし直す…………血糊べったりの自己変革セミナーが……ダルドリー・シッディが……自己組織システムが……ミイラ……を食べて……アーカシック・レコードが……お受験の……公園デビューが……テーセツの……テーセツが……テーセツを守る……のが……ホンライの……ヤマトナデシコが………ネズミ人間が……デッチあげられたルサンチマンが………テンギョウリキです………最高ですか!……サイコーで~す~………セイコーはサイコーです………
 ……なんてなぁ……
その三千大千世界に真理の光がまたたき………
オウム…ヴァジュラ…サットヴァ…フーム………薔薇十字が………ユーゲントシュティールが……世界最終戦争の……法華経の………オウム…マニ…パドメ…フーム………

Quid haec ad humanitatem?

「自由を!」(ウォレス、最期の言葉)
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by qsso | 2004-05-16 17:48 | 哲学ノート | Comments(3)
Commented by ricky_gap at 2004-05-17 06:19
なんだか久々に見る話です。
確かに日本でも集落によって同衾の習慣はあったようです。

もっとも、日本の場合は権威者どころか、
もっと後の時代になってからは「夜這い」という
実に芳しい風習があったようですが(w

リオのカーニバル(カルナバル)も夜這いの類ですが、
夜這いよりはよりはっきりしてていいですね。

やっぱ日本人って陰湿?
話が逸れました(w

夜這いしたいなぁ~(w
Commented by qsso at 2004-05-17 07:02
だいたい夜祭りは、ほとんど乱交の日だったようで~
まぁそれも、一応ルールがあったようですが……
Commented by qsso at 2004-05-18 06:21
既婚者も対象だったところが、おもしろい~

弱そうな雄シャケの乾坤一擲~
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