真梨幸子「殺人鬼フジコの衝動」

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)

真梨幸子/徳間書店

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なんだ この生命力の強さは…
このアポロン的雄々しさは…

しばしばシリアルキラーの伝記は
明るく澄み切った夏の青空のようなサクセスストーリーになる
まるで英雄叙事詩、戦国立志伝
人を殺して目指す「摩天楼はバラ色に」…

主人公=フジコはブス、バカ、虐待、貧困…数々の困難にもめげず
健気に自分の幸福を追求する
そんじゃそこらのサクセスストーリーの主人公より生命力に溢れ、天真爛漫
自分の欲望に正直である
そこに歪みはない
住む時代が違えば間違いなく英雄
織田信長なら間違いなく僕よりフジコを選ぶ!
フジコを見ていると、むしろ綺麗事でお茶を濁している僕らのほうが歪んでいるんじゃないかって思う。
「この人も、やっぱり、そんな綺麗事をいうんだ。大人なんて、みんな同じだ。綺麗事をいって、日々の問題を放置するんだ。日々の残酷に眼をつぶるんだ。外だけきれいなカバーで覆って、その中味がどんなに腐っても「それではもう一枚カバーを」といいながら、次々と覆い隠すんだ。もう綺麗事はたくさんなの、お説教はなんの役にも立たない!」(403-4頁)
そう 目を瞑って石を投げるし なんの役にも立たない。
フジコがあした持っていく給食代は、だれも払ってはくれない。
「ひたすら欲望だけに生きる苦しみ? どんなに貪っても充たされない悲しみ?」(404頁)
「「足る」を知る」というような虚しい説教(清貧思想)こそが、
満腹なひとたちが まだ食べ足りない貧乏人をあざ笑うための高級な(薄汚い)欲望にすぎないって何度言えばわかる
…そんな感じ

沼田まほかるの「彼女…」が
己の生命を極限まで後退させつつ他人を愛するということで自己愛を異常に肥大させた世界なら
この作品世界は、異常な生命力に溢れているけど、究極的に他人を愛するということがない自己愛の世界

沼田の「彼女…」が、戦後民主主義ー大きくなりすぎて進退窮まった山椒魚なら
「フジコ」は、アルカイックな古代の微笑…

フジコの人生は、なんだかまぶしい

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by qsso | 2018-04-20 12:28 | 読書 | Comments(0)
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