橋本治「乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない」

この本。
かんたんに言っちゃうと、
小泉改革…その前中後を語った本。

最初に言っておくと、
この本の「あとがき」は、
おもきしモンキリで古く、
使えないハナシなのでパスします……。

以下箇条書き風にまとめずに…
書いてみますた。

・勝ち組/負け組指標を利用して隠そうとしたもの……
そう。何かが語られるとき、必ず、なにかが隠される。
そのことのほうが、時として大事なときがある。
みんなが混乱したり、取り乱しているときは……特に。

ぬあんか、こんなハナシを聞いちゃうと、
死んだ会田雄次のハナシを思い出すんだなぁ…
会田のハナシってのは、
「終戦」の反省をシカツメらしく語っている人たちこそが、
じつは敗戦を隠した(い)張本人だったっていうこと……。
あれだけ多くの反省が語られているにもかかわらず、
じつはそれこそが彼らの責任を隠すものだったってぇこと。
(ここであの「アーレントの責任」を引いても良いが)
じゃそれは誰なのか?、
会田によると、軍人はもちろんだが、
戦争を煽ったマスコミ、多くの教育者、お役人…
この指摘だけは、ホントに大事だと思うなぁ(といってもひとは、所詮勝ち組にしか乗らないから
意味無いかも?)。
以下は会田弁
「一番励んだのは官僚でしょう。いわゆる無名のまま背後で煽った連中です。自分の名で戦争を起こして敗北したら当然処分されるはず。東条英機(ママ)すら自殺しようとするぐらいですから、名前が出た人々は覚悟していたと思います。しかし第二線級の連中はそんな覚悟もなしに煽っていたのでしょう。
 無名の人々で次に挙げられるのは新聞人です。マスコミです。彼らは激しく煽ったにもかかわらず、誰がやったと言いだしたら自分の身が危ないから、一斉に隠しましたね。…(中略)…
 その次に挙げられるのは学者、教育者だと思います。煽ったのは特に教育者、教育学者ですね。『戦争へ行ってこい、御国のために死んでこい』といい続けていた。」
「その代表は、東京帝国大学教育学部の連中だったと思います。その中心人物の海後宗臣など戦前は、徴兵不合格者は罪人だから罰せよと書いていたのを私ははっきり覚えています。不合格になるような奴は身体が弱くてお国の役に立たないから処罰せよと主張した。そんな連中が、梅根悟、宗像誠也等以下そのようなことを書いた人物が、戦後は急転直下、侵略主義の権化天皇の排撃ですよ。一言の弁解もなしにね。立場が変わったので有名なのは歴史学者の家永三郎ですが、彼の場合には変わった理由はっきりしている。戦前は皇国史観を説いていましたが、戦後は百八十度転向した。ただし終戦直後に変わったのではなくて、自分が東大の教授になれないと知って急転直下左翼になった。彼はまだいいと思う。というのは、あれは彼の個人的恨みだということが、人から見てよくわかるからです。」
「彼(ビルマの最高司令官・木村兵太郎)大将は気分としてどうしても許すことができない。あの男は片腕を失った兵隊でも除隊を許さず敵にかみついて死ねと前線に送りだした。だが英軍が来るとラングーンに何万という日本の婦女子、看護婦、一般市民、それから軍隊を置いて逃げ帰ってしまった。卑劣とも何ともいいようがない敗戦責任者です。だから戦犯で処刑するのではなくて、敗戦責任で殺すべきだったと思う。部下をおいて逃げて帰ってしまった司令官はそうされてしかるべきです。しかも彼らは逃げて帰る時の飛行機のなかで辞令によって昇進している」
「私は少なくとも戦争中に将官になっていた人々は、天皇陛下の命令で任務についたわけですから、全員切腹するのかと思った。昔の武士のように腹を切るのだと思った。ところが阿南陸相など四、五人が腹を切っただけでした。それどころか、日本人はその人たちを戦後持ち上げた。なかでも辻参謀というとんでもない破廉恥男を、参議院でトップ当選させた。この男は単なる人殺しです。こんな男を選挙で当選させるから、ますますわけがわからなくなった。
 一方B、C級戦犯の場合のように明らかに無実の男が残虐行為だといってどんどん絞首刑になっているにもかかわらず私たちは反抗もしなかった。けしからんともいわなかった。戦後の無責任時代、責任逃避時代は、こういった亡国日本が敗戦処理もできずに、狡猾な変節漢・無責任人種をのさばらせたことから始まったと思います。」(p.13-14 会田雄二「日本人は敗戦を認めよ」月刊【発言者】Aug.'95.(西部邁事務所))
まことにお説ごもっとも…である。

橋本は、勝ち組だ!負け組だ!とか、そういうものを必要としていた人たちは、
じつは勝ち組ではないひとたち、
「パッとしない人たち」だったということに注目している。
パッとしない人たちは、負け組ではないものの、このままいくとずぶずぶと負け組にスライディングしてしまうパッとしない人たち
「本当だったら”負け組”にカウントされた方がいい人」(p.84)
このパッとしない人たちが、ぶら下がる対象として勝ち組(いわゆる”トレンド”ってやつかな?)を期待、必要としていた…
会田のハナシと関連があるのは
このパッとしない人たちが、勝ち組にぶら下がっているあいだは、いままでの(バブルや無策の)反省しないですむ
無責任ですむ……「「本当だったら”負け組”にカウントされた方がいい人達」は、「勝ち組」にぶら下がって生き延びる」(p.84)
会田なら
「「本当だったら”戦犯”にカウントされた方がいい人達」は、「占領軍」にぶら下がって生き延びる」
っていうおハナシ…
うーん、にゃあるほどとは思うけど…
ただ、
勝ち組/負け組なんてハナシ(図式)は、
変わらずに古い話じゃねッ
日本人なんか、つねにそういう思考法でやってきたんじゃ。
雑駁にあげても、源平、関ヶ原、維新、戦争、ヤスクニ、イジメ、郵政選挙、バッシング炎上…みんな常に勝ち組ぶら下がり論理
つねに勝ち組が暴走する社会…ニッポン!チャチャチャッ!

・バブル崩壊後の日本のことを書いているけど、かなりの部分は郵政選挙&小泉改革について。
郵政選挙の橋本の認識は、
そのむかし紹介した石川好とほとんど同じと言っていいじゃないかなぁ?…(p.80)

このなかで
「小泉にしたがったほうが得だと思ってしたがった人たちが大半だったということが見過ごされている」という指摘をしている。

やっぱ日本人は民主主義は分からなくても、損か得かだけはよーく分かるんだよねぇ
こっちの線のほうが、なんとかマトモなみんしゅしゅぎが成り立ちそうな気がするんだけど……功利主義じゃなくて損得主義

「重要なのは、その改革が適切かどうかではなく、それを言っている人たちが勝ち組かどうか?」(p.91)
まったくもってその通りだよねぇ。
たとえば、勝ち組コイズミ(郵政改革)に対するマスコミの最近の対応とか…
その逆が、アソー。
世界って不条理だねぇ?(笑)

「我慢がなくなった」(p.202)
んじゃなくて、我慢が変質してしまっただけだと思う。

・それにしても、なんでこうも
他人にぶら下がって自分のあたまを取っちゃいたい人たちが多いのか?
って思うかもしれないけど…
まぁぐうたらなワシがじぶんのことを言わせてもらえば…
ヤッパ楽なのねぇ…考えなくて良いっていうのは…。
オンブにダッコで、バンザイなのよ。
ひょっとすると日本国民って、一度だって、自分で考えて行動したことがないのかもしれない(笑)。
「そんなバカな!」「ふざけんな!」
って、日本人であるあなたは思うかもしれないけど、
きっぱりと言っちゃうと、そういう見かただって充分に成り立つと思うんだなぁlollol。

勘違いしちゃいけないのは、
そういったぶら下がりは、低学歴の家庭の主婦やアホなオヤジ&若者だけじゃないってこと。
ていうか、そんなことを考えている、ちょっと教養ってもんがあるオジサン・オバサン…のほうが、よっぽどべったりぶら下がり。
そんなオジサン&オバサン(オニイサン&オネエサンも加えてもいいけど)ほど、最新の思想やカタカナコトバ、小賢しいリクツ(最新のトレンドってやつ)にべったりでしょう?。
ドゥルーズが何を言ったとか
最新の思想はマルチチュードが核心とか
だれそれが権威がないとかあるとか
人の考えだけが頼りのくせに、
自分で考えたつもりになってる
こういう「パッとしない人」がタイハン。
だからよけいにタチが悪いわなぁ。
かくいう、こんな新書を読むワシも…
こんなもん読んで、安心して、頭とっちゃいたいために読んでることになるなぁ(哲学・思想書なんか好きなひとは、みんなそうかも(笑)。そういうもんを振り回せば、それで安心・幸福なんだよ)。

・相変わらず
目覚めよ!、システム(現状)からの脱出!
を説く気味の橋本だけど

といっても、みんなソクラテスになるわけにはいかないしねぇ
要路のことは要路の人にっていう考え方だってありでしょう?…
めんどくさいことは他人にまかせといて、
楽しいことだけ考えて(自分の幸福だけ追求して)生きる…
それもあんまりだと考えるなら…
結局、テキトーが一番良いんじゃねぇ

少なくとも、
ぶら下がるかどうかの問題じゃないかもねぇ
それぐらい人間って業が深い?

・ハシモチにとって、日本の社会は、あくまで”完成されたシステム”(ワシが思うに、たぶんに欧米型民主主義を超えているという意味で)で、その完成された社会を改革をすれば、自分たちの既得権益が損なわれるということは分かっている、しかし、このままではどうにもならないということも同時にわかっている社会なのねぇ

「自分たちの既得権益は減少し続けている」「自分たちはなにもしないが、誰かがなんとかするべきだ」というかんじで、勝ち組の暴走は十分に待望されていた…
このことは前にも書いたねぇ
ただ、待望されてない時代ってのが、たぶんに見あたらないと思うんだ。

まぁ「あとはよろしく」……ってことで
いまのポストコイズミの政局は、これを読んでから…なんて言って良いのか?

※太字は基本的に引用……と思う。
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by qsso | 2009-02-13 10:41 | 文学・歴史 | Comments(1)
Commented by ルサンチマン使い at 2009-03-05 00:16 x
左様ですか。それは西洋の魔女狩りやってたころと瓜二つですネ・・・。コレもどこかにいる誰かの計算なのデスカ??
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